気になるあの絵

新年最初のトーハク詣で。正月2日から開館しているということで正月休みの暇つぶしに行ってみたら、同じような考えの人がたくさんいて常設展が特別展並みに混雑していた。本館と東洋館のロッカーが完全に埋まっていたのは初めて見た気がする。

▲金銅製眉庇付冑

平成館考古展示室にある祇園大塚山古墳出土の金銅製眉庇付冑。以前から展示されていたのかどうか覚えていないけれども、目に止まったのは今回が初めてです。展示替えがあったのかもしれない。眉庇付冑(ツバのついた冑)は古墳時代には他にも普通にあるのだが、他がたいてい鉄錆色なのに対してこいつはやけに残りが良くてぴかぴかしている。

このぴかぴかしているというのがひとつのポイントであり、金銅(銅に金メッキ)製です。金銅はこれが造られた5世紀当時では朝鮮半島からもたらされたばかりの最先端技術だったそうである。後代には装飾品や仏像仏具なんかで普通に使われるようになるのですが。
ちなみに銅は鉄に比べてやわらかいので鉄の武器が飛び交う戦場ではあまり実用的ではなく、

実際の戦闘での機能性よりも、煌びやかに見せることをそもそもの目的として制作された ーー橋本(2013)

とのことです。軍人が儀式に出席するときに身につける礼装みたいなものか。

ぴかぴか以外にも目に止まったポイントがあり、金銅のメッキが残っている部分に文様があるんですね。しかもちょっと下手なのが独特の味を出している。

▲「哺乳類」

▲「爬虫類」

▲「鳥」

▲?

(図像の名称は橋本(2013)による)

この写真で撮っていない側に「魚」の図像もあるようです。鳥や魚は他の古墳から出土した冑や、江田船山古墳の鉄刀にも彫られている事例があり、

同源の世界観を表している可能性がある。

表現の元になる神話などを反映しているとみるのが妥当であろう。

(いずれも前掲書)

間の抜けた絵ではあるけれど、最新技術で作った礼装用の冑に彫っているくらいなので大真面目であるのは間違いないのです。しかしこの彫刻にせよ埴輪にせよ、古墳時代人が作る像の独特のデフォルメ感は良いですね。

白磁

最後おまけ。全然関係ないんですが、東洋館展示の中国唐代(7世紀)の白磁壺。つるっとしすぎる壺はあまり好きでないつもりだったけど、これはなかなか気になります。あるいはつるっとしすぎていない(微妙なざらつきがある)のがよいのかも。ミニマルな良さです。

 

〔参考文献〕
橋本達也(2013)「祇園大塚山古墳の金銅装眉庇付冑と古墳時代中期の社会」『歴博フォーラム 祇園大塚山古墳と5世紀という時代』六一書房