古墳前バス停

湖西線比叡山坂本駅から江若バスに乗り、5分ほど。たどりついたのは……

比叡山坂本駅前のバス乗り場

▲バスの車内にて。次は古墳前。

▲古墳前バス停で下車。

古墳前バス停。ちなみにこの道の名前は古墳通というらしい。

きっとすごく大きな古墳とか、考古学的に貴重な古墳とか、そうでなくてもこの地の歴史を語る上で重要な古墳があるのではないかと期待が膨らむ名前です。がしかし、実際のところそういうわけでもない。(古墳があるのは本当)

▲平石古墳

バス停近くの階段を登ったところに平石古墳という古墳があります。隣が公園になっていて、そこからは二段築成のそこそこ大きな円墳っぽく見えるけれども、現地の説明看板によると8×15mの方墳とのこと。たぶんこの丘じたいは古墳ではなく、てっぺんの囲いがある部分だけが古墳なのだろうと思います。時期的にはすでに古墳時代が終わり飛鳥時代に入ってからの終末期古墳。埋葬施設は切石積の横口式石槨。切石積はいいですね。見られるならぜひ見たいけど公開はしていないようです。

図書館で発掘調査報告書を探してみたけど見つからず。探し足りないだけかもしれないけれど、あるいは発行されていないかもしれない。多少の言及がなされている本はあり(田中2008)、被葬者について「新たな中央・地方官制の中に組み込まれたある種の地方官であったのではないか」と推測しています。

▲高峰1号墳(中央)と2号墳(左端)

平石古墳の他にも、バス停から少し先に歩くと高峰1号墳・2号墳という2基の古墳が公園の中にあります。こちらも発掘調査報告書は見つからず。『大津市史』に少しの記述がありましたが情報量は現地の看板とさほどの差はない。古墳時代中期の古墳群であり、1号墳は45mの前方後円墳、2号墳は18mの円墳。すでに墳丘が削れてしまっていたのを復元したようです。したがって写真の墳丘はほぼ現代的構築物であって往時の姿をどの程度残せているかは不明。

というわけで古墳前バス停の「古墳」とは、めっちゃローカルな小古墳なのでありました。まあバス停というのはすごいローカルなランドマークの名前がついていたりするものですね。「神社前」とか「小学校前」とかいうバス停があったとしたら、何の変哲もない神社や小学校の前にあると考えるのが普通ですね。「古墳」というキーワードがあったので無駄に想像を膨らませてしまった。これはいけません。「古墳前」バス停の前には何の変哲もない地元の古墳があった。それでじゅうぶんというものです。

 

〔参考文献〕
田中勝広(2008)『古墳と寺院―琵琶湖をめぐる古代王権―』サンライズ出版
大津市役所(編)(1984)『新修大津市史』第7巻