かわいいあの子は摩利支天

秋が来たら白河関を越えようと思っていた。能因法師の有名な歌ですけれども、これがなんか、気になっていた。

都をば霞とともに立ちしかど秋風ぞ吹く白河の関

山を越えて平野に下りてきて、色づいた黄色い田んぼの稲穂が揺れる、村があり家があり、古い関の跡地、何もない空き地に秋の匂いのする風が吹いている、みたいな風景が、行ったことはなくて適当に想像で作っただけなのだが繰り返し頭の中で流れては消えていく。今年の夏はグエェって唸るほど暑かったですからね、きっと意識的にか無意識的にか秋が恋しかったのであろう。

そして秋が来たので白河関に行こうとしていたのだが、理由もなく思うには、関を越えて陸奥へ行こうとするものが下毛野の古墳を未だ見ていないのはいけない。この思考に脈絡はなく、なんとなく猛暑でぐにゃぐにゃになっていた脳味噌がふわっと演算をしたところそうなったにすぎない。しかしながらまず下毛野の古墳を見ねばならないことになったので、当地の中心地にして最大級の古墳であるところの、小山のふたつの古墳にやってきたのである。

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琵琶塚古墳。墳丘に生えてる木が、生やしっぱなしでもないし、シンボル的に数本だけ残すわけでもなく、完全に切って往時を再現したのでもない。疎林。これは珍しい気がする。保存上または景観を考える上で何らかの理由があったのかもしれず、それならば資料館のおっちゃんに話を聞いておけばよかった。シルエットはなんとなく関東でよく見るような感じだなあと思ったのだけれど、形式学的に裏付けのある話ではないです。のっぺりした感じが6世紀っぽい。

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摩利支天塚古墳。こっちものっぺり系かと思ったけれど、前方部に登ってみたら思いの外くびれのところがキュッとしててシュッとしたシルエットです。ここに立って後円部の偉い人を崇めようという気分が高まる。鳥居が前方部にあって摩利支天の本堂が後円部にあるという配置も、いつの時代の人によるものかは分からないけども、良いのです、崇めたくなる。琵琶塚よりも古いらしく、5世紀築造とのことで、シュッとしたシルエットは古式が残っているためかもしれない。

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あと、関係ないけど墳丘の下にいた野良猫がかわいいヤツだったので勝手に写真のモデルにした。名前は知らないし教えてもくれないので仮に摩利支天キャットとします。

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琵琶塚の反対側です。二車線の県道のある台地上から見ると古墳を少し見下ろす感じになり、ということは古墳のある場所は付近の最高所ではない。古墳って高いところにあるイメージなのでちょっと変わってる感じはする。ただしもしかしたら珍しいことではないのかもしれず、適当に思っただけにすぎない。

最後にどうでもいい話ですがこの近辺にある甲塚古墳というのがラブホに接してるらしいですね。ラブホの窓から古墳が見えるのはとてもナイスな感じがするのでいずれ再訪しようと思います。