古墳がギュッ☆とクビれたら

宮崎は古墳が多い。なんでかは知らないけど、ともかく多いので、衛星写真をご覧ください。たいへんワクワクします。


▲西都原古墳群第2支群


▲西都原古墳群第1支群


▲持田古墳群


▲川南古墳群

(ヤバさに気づいてしまったあなたはもう終わりだ……古墳見物に行くしかない……)

古墳文化の中心地であるところの近畿から遠く離れているのになんでこんなに大きな古墳が多いのか理由がはっきりしないようなので、とりあえず当時の宮崎県民がやたらと古墳好きだったということにすればよいのではないかな(してよいのか?)。中央政権とのつながりで造らざるをえなかったとか言うと辛気臭いじゃないですか、そんなのより宮崎県民全員が上も下も古墳のことを考えない日はないレベルで熱狂して、趣味は古墳、寝ても覚めても古墳、みたいになってたほうが愉快な南国ピープルって感じで楽しい古墳時代になる。

そんなワクワク古墳ピープルの熱狂的建造物群を見物してきた。西都原の前方後円墳のすごくいいところは前方部が低くてクビレがはっきりしてるのが多いことです。というかそれがいいって気づいてしまったのです。以前から古墳はやっぱ前期型の前方部低いのが綺麗だよなあって感じはあったのだが、意識として形になってしまった。「これって……まさか……恋……!?」って気づいちゃったヒロインみたいな心境です。なので今回は初々しい前期型前方後円墳への恋の甘酸っぱさを表してみたいと思います。

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▲西都原古墳群109号墳

まず109号墳のサイドビューです。109号墳は4世紀末の築造、時期的には古墳時代前期なので前期型と言ってよいと思う。左が後円部で右が前方部。全体に傾斜が緩くてペタッとしている。特に後円部と前方部の間が低くなっていてクビレがはっきりしています。このクビレのところ登りたくなりませんか、なりませんよね、まあどっちでもいいんですケド。

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▲西都原古墳群265号墳

比較のためクビレがあんまりない古墳も見ておきますと、時代を下って265号墳、築造は6世紀、後期型です。全体が高くなって傾斜も急になって土盛りとしての存在感は増すけれどもクビレは目立たなくなって寸胴になりました。こうなるとここから登りたいとか、ここを握ってどうにかしてみたいという感情はちょっと弱くなります。あ、握ってどうにかしてみたいという感情、それですね、前期型はそれがあるのだ。猫の首輪のところをスベスベしたい感じにも似ている。なのでクビレのとこ太くなるとどっしりするのはいいけど困りますね。

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▲西都原古墳群100号墳

次は上に登ってみます。キリ番の100号墳です。前方後円墳は後円部がメインで後方部が儀式を行う場所、という説をとりあえず信じているので特段の用がなければ前方部からお邪魔しております。後円部の方向を見ると、なんかこんな生物がいたような気がしなくもない、平べったくてかわいいですね。視覚的にはクビレがあるために後円部の主役感が際立ちます。前方部の遠近感が強調されて、やや離れたところから観察しているような距離感もある。それが何かの目的あってのものなのか、あるいは意図などなかったのか、単に胸にキュッと来るから採用したのか。最後の理由なら現代人にもキュッと来させる効果はあるように思われる。

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▲話の飛躍。甲斐銚子塚古墳(山梨県)のクビレ

話は飛びますが、クビレのある美しさといえば山梨の甲斐銚子塚古墳はかなりのものです。大きいし、復元も美しい。サイドビューはクビレのむこうに八ヶ岳や茅ヶ岳の火山特有のなめらかな稜線が見えており古墳のなめらかなシルエットと相乗効果でまことによろしい感じがします。この景観設計はかなりのものと思う(勝手に思ってるだけだ)。ただし古代山梨県民は宮崎ほど古墳にラヴしてなかったので(たぶん)美しきクビレのある古墳は多くはない。余談ですが。

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▲甲斐銚子塚古墳のクビレサイドビューは八ヶ岳と茅ヶ岳が見える

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▲西都原古墳群46号墳

西都原に戻って46号墳。これは前期の終わり頃であり、次の世代への変化の兆しが見えるというようなことがなにかに書いてあった。たしかにサイドビューは少しモッタリしたシルエットでクビレのギュッとした感じが弱いようにも見えるのだが、

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前方部に登って見るとちゃんとギュッとしており安心感がある。むしろこの古墳はモッタリしていながらクビレがあり、美しさを損なう手前で踏みとどまりつつ重量感を見せるような効果が、狙ったか否かは知らないけれども、あるような気がする。

以上、甘酸っぱいクビレのラヴです。西都原古墳群にせよ、他にしても、宮崎は分布密度が高すぎてヤバくて、墳丘に登ると隣の前方後円墳の尻尾が見える。ほどよく首根っこを掴めそうな距離感。そう、そして、あなたがクビレを掴むとき、前方後円墳もまたあなたの心を掴んでいるのだ。