生まれ来る古墳マニアのために

 よくひとりぼっちで旅をしている。というのもひとりぼっちで旅をするのが好きだからなのだが、いつも必ずそうであるわけではなく、十回に一回くらいは誰かと一緒である。ちゃんと誘ってくれる人がいるので意外と完全ぼっちではない。じつにありがたいことです。さらに最近は休日に人と会いたいと思うことがときどきあって、今回は誰かと行こうか、というふうに思い立ったりする。ひとりぼっち趣味人としては大きな心理的変化という気がしている。

 それで、少し前のことながら、石川県へ何人かで行くということがあり、ひとりぼっち旅ではまず泊まらぬだろう超高級温泉宿でGoogleマップを見ていたら近くに古墳を見つけてしまった。ここらへんの嗅覚は、しょっちゅうGoogleマップを転がして古墳探しをしているとありそうっぽい場所が分かってくるようである。とにかく見つけてしまったものは行かねばならないので、マニアでもない人を誘うのは申し訳なく思いながらも古墳に行こうと言ってみた。そしたら行くことになった。

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 秋常山古墳群。1号墳が大きな前方後円墳で、丘陵の上に築いて広い平野を見渡す、いかにもその頃の大首長の墓というべき立地です。(ウフフ)前方部が短いのはいつか削られてしまったからで本来のものではなく、人の世を生きてきた古墳という感じだ。(ホホッ)部分的に葺石が復元されてコロコロしている。(ウフッ)三段築成のテラス。ほどよい墳丘の角度。(アアー)遠くに見える丘にも古墳があるらしい。云々。

 内心盛り上がってはいたのだが、それをいったいどう伝えたものか分からず、とりあえず普通に静かにしていた。自分のニッチな趣味の盛り上がりポイントををいかにして人に伝えるか。実はこれが難しいのである。以前、古墳同人誌でも作るべと思ってネタを考えていたのだが、全部ちっとも面白くないのです。いや自分は面白いんだけど多分普通の人は面白くない。例えば全然興味ないですって顔してるそこらへんのおじさんが本を手に取ったとして、興味が無いのに知的好奇心が湧き上がってきて悔しいけどマニアになっちゃう、というレベルのものはできないか。ハードルが高すぎる? ハハァ。そう、それで結局何も手を付けていない。何もしていなければ何も考えていないも同然である。いけない。

 しかし何にせよ、いかに面白く語れるか、は大切なことなのです。人の心に潜む変態的好奇心を掘り起こしてゾンビのごとく周辺のピープルをマニア化させていく。きっとできるはずなのだ。古墳マニアの芽はいつもあなたの心の中から顔を出そうとしているのだから。何を語ろう。

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▲秋常山1号墳前方部先端からの眺め。もう少し先まで墳丘が続いていたということか。平野は広い。むこうの丘にも古墳があるらしい。